版画の技法について


 リトグラフ

リトグラフは平版の一種で、石版石やアルミ板・ジンク板などの平らな版面(平版)に描画・製版し水と油の反発作用を利用して専用のプレス機で刷る版画。
版面に直接描いた絵を、ほぼそのまま紙に刷り取れるのが特徴で、製作過程は大きく「描画」「製版」「刷り」の3工程にわかれる。
リトグラフの版には石灰石を使用してたが、日本では版画の大型化や物理的な要因に伴ってアルミ板を用いることが多くなっている。

 シルクスクリーン

シルクスクリーンは孔版画の一種で、インクが通過する穴とインクが通過しないところを作ることで版画の版を製版し、印刷する技法。
インキが厚く刷られ、明確な色彩表現のできる点が特徴であり様々な製版方法がある。
カッティング法(切り抜いた目止め用の膜をスクリーンに貼る)、ブロッキング法(描画剤でスクリーンに描いた上から目止め剤を掛け、描画部のみ洗い落とす)
今では写真製版(感光性の目止め剤を用いる)も多用されている。最近は絹ではなく、化学繊維を使用することが多くなっている。

 銅版画

銅板を版材とする版画。
銅板に直接線刻して製版する彫刻凹版技法(直接技法)と,酸性溶液を使用する腐食凹版技法(間接技法)とに分けられる。
前者にはドライポイント,メゾチント,
後者にはエッチング,アクアチントなどの技法がある。

 ドライポイント

ドライポイントは、金属版を直に印刻し、描画をする銅版画の彫刻凹版技法(直接技法)のひとつ。
版材より硬い鋼鉄製のニードルなどを使用し直接版面にイメージを刻み込みます。
こうしてできた版は、印刷すると直接刻まれた刻線の両側にできるまくれにもインクが絡まることで、独特のやわらかく滲み(にじみ)のある描線を表現することができる。

 メゾチント

メゾチントとは銅版画の彫刻凹版技法(直接技法)のひとつ。
中間調子の技法という意味で、諧調表現が比較的簡単にできる方法。
ドライポイントから派生した技法と考えられ、銅版の表面に無数の傷を付けると、刷のときインクが拭き取れず真っ黒に刷れる。
この傷(めくれ)を絵柄に合わせてスクレパーで削りさらにバ二ッシャーで均す事でインクが拭き取れるようになり、白く絵柄が浮き出てくる。

 エッチング

エッチングとは腐蝕の意味で、銅版画の間接技法のひとつ。
腐蝕を使う技法は全て含まれますが,通常一般には腐刻線による技法を言う。
エッチングは、銅板の表面をグランドという描画用の防触剤で覆い、版の裏は防触剤で保護しておく。
ニードルで描画し腐蝕液に浸けると描画した部分が腐蝕され腐刻線となる。
腐蝕を使う技法は腐蝕液の力により版を刻むため、腐蝕時間の長さにより腐刻の深さつまり線の太さがきまる。
強い線の部分から描画し、短時間腐蝕した後に描き足し再度腐蝕するか,全ての絵柄を最初に描画し一定時間腐蝕した後に、弱い調子の部分を防触剤で止め再度腐蝕して線の強弱をつくる。
腐蝕液には、硝酸か塩化第二鉄液を使う。

 アクアチント

アクアチントとは銅版画の間接技法のひとつ。
水彩画のように広い面積にわたり諧調の差を持った調子をつくれる技法。
アクアチントを施さない部分に防触剤(黒ニス)を塗る。
松脂を乳鉢などですりつぶし細かな粉状にし布にくるんで版面上で振り、松脂の粉を散布するか、アクアチントボックス(ダストボックス)を用い、箱の中に粉を舞い上げて落ちてきた粉を版で受け止め均等に散布するかする。
版の下から熱し松脂の粉を溶かして版面に定着する。
短時間腐蝕した後,弱い調子の部分を防触剤で止めさらに腐蝕します。この行程を2・3回繰り返し調子の幅をふやしてゆく。
アクアチントのみで制作される事は稀で、エッチングとの併用が多い技法。